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コーヒービジネス最前線

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世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。SDGsをテーマとしたコーヒービジネスを追うシリーズ、今月はイタリアからエコロジカルなデザインをご紹介。今回は、サスティナブルに様変わりしてきたミラノのコーヒー自動販売機事情をお伝えします。

サスティナブルなデザインと機能性で、自動販売機の人気が再上昇。

Vol.112 イタリア・ミラノから

 イタリア人にとってコーヒーのない生活は考えられない。一日8時間を会社や学校で過ごすのだから、そこで自動販売機のコーヒーを飲む機会が多いのも自然なこと。イタリア国内には自動販売機を作る会社が大小含め40〜50社あると言われ、設置台数はオフィス関連だけでも80万台以上とフランス(59万台)、ドイツ(55万台)、イギリス(41万台)などの近隣ヨーロッパ諸国に比べても群を抜いて多い(2016年のデータ)。そのうちコーヒーの自動販売機は55%を占める。

 そんなコーヒーの自動販売機が、ミラノで様変わりしてきている。ブランドのロゴがついた、黒くて無機質な従来の機械とはうってかわり、気持ちをリラックスさせるような植物柄をあしらったり、エコを意識してダンボール素材でラッピングした機械が登場し注目を集めている。中でも話題はpiuinforma社の自動販売機だ。リサイクル紙製カップを使用したことや、緑の森やジャングルをイメージしたデザインが人気を博し、今では要望に合わせてカスタマイズした機械も製造販売する。他社製でも個性的な自動販売機が街中に目立つようになってきたが、実はこれはイタリアの自動販売機業界全体の取り組みなのだとか。「持続可能な自動販売機」プロジェクトのウェブサイト(https://www.vendingsostenibile.com)では、コーヒーかすをリサイクルしてバイオガスに変える取り組みや、エネルギー消費を90%削減した自動販売機などの事例が多く掲載されている。

 変化のきっかけは、カプセル式のコーヒーメーカーが普及し自動販売機でのコーヒー消費が落ちていたことにもあるという。従来の自動販売機ではエスプレッソ、カプチーノなどの定番メニューのみだったが、多様なフレーバーを求めるニーズにこたえるべく、コインを投入してから豆を挽いて新鮮なコーヒーをいれる機能を搭載したり、ビオ系のコーヒー豆やミルクの種類を選んでカスタマイズできるようにしたりと性能もサービスも向上させた。バールのエスプレッソが1ユーロなのに対し、自動販売機では0.5〜0.8ユーロ。価格に大差なければ、より美味しいバールに行けばよいとイタリア人なら思うところだが、最近の自動販売機ではコーヒーとのペアリングとしてシリアルやナッツ類などのオーガニックで健康的なスナックが売られたりと付加価値もバールに負けないくらいに高まり、自動販売機のコーヒーが見直されるようになった。消費者の需要に合わせて自動販売機をサスティナビリティという視点からデザインし直す作戦も功を奏しているようだ。
 バールの代わりに自動販売機コーナーが設置されている場所も増え、イタリアも変わってきたなと感じている。今年の新型コロナウイルス感染拡大とその大きな被害を受けてイタリアの消費形態も変わっていくと予想される中、従来の対面型バールでなくても美味しいコーヒーが買えるとなれば、ますます自動販売機の需要は高まっていくのではないだろうか。


*1ユーロ=約120円(2020年6月現在)
文=坂本きよえ ミラノ市在住
写真はすべてistock
更新日:2020/7/15



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