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コーヒー海外事情

アムステルダムに流れる、スローなカフェ時間。

アムステルダムに流れる、スローなカフェ時間。

オランダ人とコーヒーの付き合いは古く、昔ながらの雰囲気はいまも多く存在する「ブラウンカフェ」で味わえる。その一方で新たなカフェも続々と登場。コーヒー愛に満ちたオーナーの感性豊かな空間と美味しい一杯で、スローなカフェ時間をどうぞ。

Coffee Bru
コーヒー・ブル

子供連れからビジネスマンまで、客層の広さが特徴。

 5年前にオープンしたカフェ「コーヒー・ブル」は、市内東部の商店街にある。そのオーナーは4人。マリ・ルイース・ドルストさんとルサン・ドルストさん姉妹、それぞれのパートナーであるヨーリス・コーブッセンさん、イェルン・カイゼルさんだ。

 4人は以前から、いつか一緒に何かをやりたいと考えていた。「そんな中でイェルンと世界旅行に出たんです。各国で美味しいコーヒーやケーキをサーブするアットホームな店をみるたびに、自分たちでも店を開きたいという気持ちが募っていきました」

 そう説明するのは、デザイナーでもあるルサンさん。店のロゴや、店内を彩るグラフィックは、全て彼女が手がけている。

左から:ルサン・ドルストさん(左)とイェルン・カイゼルさん。ルサンさんのお姉さんカップルと4人でこの店を経営。2号店もあり、そちらで焙煎やケーキ作りをしている。/バリスタの機敏な手さばき。

 本格派コーヒーが飲めると評判のこの店では、用途にあわせて世界各国の豆を使い分けている。例えばレギュラーコーヒーやカプチーノ、そしてフラットホワイトには、厳選したブラジルの豆。エスプレッソにはアフリカの豆。そしてフィルターコーヒー用にはそれ以外の豆、という具合だ。自分たちでも焙煎はするが少量で、大半は市内の焙煎工房から仕入れている。そんな彼らのこだわりのコーヒーを飲むために、毎日通う常連客も多い。

左から:ラテアートも美しいカプチーノ(3.25ユーロ)。/真っ赤な色が美しいレッド・ベルベット・ケーキ(左、3.50ユーロ)と、ヴィーガンチョコレートバー(2.80ユーロ)はどちらもホームメイド。


アットホームな空間が生む、憩いのコーヒータイム。

左から:店内奥の大きなリーディングテーブルでは、ビジネスマンが和やかに会議中。天窓からの陽ざしも心地良い。/ブルのロゴは、グラフィックデザイナーのルサンさんが手がけている。

アムステルダム東部、広場に面した商店街にあるブルは、エリアのリビングルーム的な存在。天気がよい時期には、店の前にもテラス席が。

 アットホームな雰囲気作りには、オーナー4人はことのほか力を入れた。「誰でも気楽に入れる、地域のリビングルームのような存在」を目指したからだ。最近では、客席回転率を下げるからと、ノートパソコンの持ち込みを制限する店も増えているが、この店ではその必要性は感じていない。全てのお客さんに、自分なりのよいひとときを過ごして欲しいと願っているのだ。

 そんな店内では、赤ちゃん連れのママや、書類を広げて和やかに会議をするビジネスマン、無心でノートパソコンのキーボードを叩く若者たちが、「それぞれのひととき」を謳歌。自由でリラックスした空気が漂っている。

Coffee Bru
コーヒー・ブル

アットホームな雰囲気で、地元の常連客に愛されているコーヒーの店。5年前のオープン以来、根強い人気を誇る。本格的なコーヒーもさることながら、ホームメイドのケーキも逸品。
■ http://www.coffeebru.nl/

Back to Black
バック・トゥー・ブラック

この店でサーブするブラックコーヒーは9種類。

 インゲ・ブルトハウスさんとノールチェ・フルッテルスさんは、子供の頃からの大親友。「大人になったら一緒に何かやろうね!」という少女時代からのふたりの夢は、旧市街の小径沿いにあるこぢんまりしたカフェとして実現した。2年前のことだ。

「バック・トゥー・ブラック」という店名には、ふたりのコーヒー観が凝縮されている。「いっとき、ミルクやシロップを入れた珍しいコーヒーが流行ったけど、私たちにはしっくりきませんでした。美味しい豆を上手にいれれば、ブラックコーヒーに勝るものはない。そんな思いから、この店名にしました」と、インゲさんは説明する。

 豆は自家焙煎。扱う銘柄は、季節ごとにチェンジする。今使っているのは、ブラジルとニカラグア産だ。「いつも旬の豆を使うようにしています。そうすることで、常連さんにも変化を提供できて楽しいです」

左から:ナチュラルテイストなインテリアデザインは、女性オーナーふたりの手作り。/若いアーティストやデザイナーをサポートするのもこの店のコンセプト。作品を展示販売するコーナーが設けられている。


エリアや環境への配慮も、大切なコンセプトのひとつ。

インゲ・ブルトハウスさん(右)とノールチェ・フルッテルスさんは、20年来の大親友。1度は企業に就職するも、2年前にこの店をオープン。

 最近では、チェーン店よりも個人経営のカフェが人気だ。それについてふたりは、「味だけではなく、細かなディテールにまでビジョンを貫くことができ、それがお客さんにも伝わっているから」と分析する。そんな彼女たちもまた、「サステイナブルであること」を店のモットーとして貫いている。店のものは、契約する電気会社から洗剤に至るまで厳しく吟味。「環境や社会への配慮は、決しておろそかにできないこと」と考えているのだ。

 コーヒー豆も、児童労働、奴隷労働がなく、品質向上に熱心な生産者の豆だけを扱う輸入業者から購入している。

 一方、若いクリエーターをサポートすることにも力を入れている。無料で店内の壁をギャラリースペースとして貸し出したり、無名デザイナーのプロダクトも販売。そんな店の様子からは、「真によい場所でありたい」というふたりの思いが伝わってくる。

左から:暖かい日に人気のアイスラテ(3ユーロ)。/ホームメイドのアップルタルトは、この店の定番。これが目当ての常連客も多い(3.75ユーロ)。/腕のよいバリスタのラテアートが映える。


Back to Black
バック・トゥー・ブラック

自家焙煎のコーヒーとホームメイドのケーキが評判のカフェ。アムステルダムらしいこぢんまりとした建物の1階で、コージーな雰囲気も人気。「ハイクオリティ」と「サステイナビリティ」が店のモットー。
■ http://www.backtoblackcoffee.nl/

roost
ロースト

オーナーのカルラ・トルールストラさん。

オランダ人の父とカナダ人の母を持つカルラ・トルールストラさんは、カナダ生まれのカナダ育ち。5年前にアムステルダムに移り住み、その2年後に「ロースト」をオープンした。

 ローストがあるのは、公園や病院、大学など、さまざまな公共施設が集まる市内東部の一角。訪れる人の顔ぶれも、地域の住人から学生、そして病院帰りの人など多彩だ。そんな幅広い客層にも対応できるようにと、座席のスタイルには趣向を凝らした。テーブル席やカウンターのほか、パーテーションつきのミニブースも設けた。「ひとりでも、グループでも、自分なりにコージーと感じられる場所が見つかるように」というカルラさんのこだわりからだ。店の奥にあるミニ・ライブラリーも大好評だと言う。最初はわずか数冊でスタートしたが、たくさんの本を寄付してくれる常連客も多く、今ではその数は150冊を超えた。

左から:キッチンの壁には、さまざまなメニューのレシピが。/ギリシャヨーグルトとホームメイドのグラノーラ。甘さも控えめで芳ばしい(5.50 ユーロ)。/ホームメイドのゴートチーズとナスのチアバッタ(6.50 ユーロ)。

「本当に美味しいものだけをサーブする店でありたい」と言う彼女は、店で出すケーキやパン、グラノーラなど全てのものを一から手作りしている。どれも調和のとれたおいしさで、これを目当てに毎日通う人も多い。

 コーヒー豆は、ホンジュラス産を選んだ。「いろいろ試しましたが、うちのような小さな店では、オールラウンドな豆が理想。エスプレッソやストレートでもおいしく、ミルクとの相性がよいものを選びました」と言う。

究極のコーヒーを目指して、細心の心遣いでサーブする。

窓際のミニブースの座席は、ひとりでのんびりしたい人に人気。

 ディテールにこそ細心の心遣いをするのがモットーだというカルラさんは、コーヒーの入れ方にもこだわっている。温度や分量、時間をしっかりと管理し、できる限り科学的にアプローチすることで味を安定させるためだ。

「今は、コーヒーのことを知り尽くしたいという気持ちでいっぱい。目標は、もう1軒コーヒー専門のカフェを開くこと」とカルラさん。とことん追求して、究極の1杯をサーブする店をオープンしたいと目を輝かせる。

左から:店内奥にあるトイレの前にできたデッドスペースは、ミニ・ライブラリーとして活用。常連客に好評で、本の貸出もしている。/ウッディな色調で落ち着いた雰囲気の店内。ブルーやライムグリーンなど、ところどころに使われた鮮やかな色がほどよいアクセントに。/店内中央の大きなテーブルでは、大学生たちが勉強中。


roost
ロースト

平日は朝7:30〜18:00、土曜日は10:00〜17:00の営業時間中、いつでもホームメイドのおいしい朝食とランチメニューがオーダーできる。それらの味は、丁寧に入れたコーヒーと共に定評がある。
■ http://roostkoffie.nl

TOKI
トキ

左から:ダブルエスプレッソにピッチャーに入れたお湯を添えてサーブするアメリカーノ(3ユーロ)。/見た目も美しいアイスラテ(3.50ユーロ)。

 オープンして1年を迎えたTOKIは、若者に人気のショッピング通り、ハールレマーストラートのすぐ裏にある。店内は約90平方メートル。けれども座席数はわずか35程度と、空間を贅沢に使っているのが特徴だ。

 オーナーのジェフ・リンクさんは、現在34歳。2年前まで広告代理店に勤めていた。約5年ほど前から自分のカフェを持つことを夢見ていた彼は、「〝ゴー・スロー〟の精神で、訪れる人がゆったりとした気分になれる場所作りを目指した」と言う。そんなビジョンで生まれたこのカフェを、ジェフさんは日本語の「時」と命名。日本の深淵な精神性にインスパイアされたという彼は、この店名に「今」を大切にするという哲学を込めたのだ。

大きなテーブルがあるコーナーには、ノートパソコンで作業する人の姿も。

 店をオープンするにあたっては、世界の各都市を巡ってアイディアを集めた。カフェだけではなく、多くのビール醸造所や、コーヒー、紅茶のアトリエも訪れた。そんな探究心のたまものが、この店のラインアップだ。クラフトビールはロンドンの小さな醸造所から。紅茶はブルックリンのティーアトリエのもの。そしてコーヒーは、BONANZAというベルリンの焙煎工房から購入している。「厳選したレアなプロダクトを扱うのは大切なこと。この街ではうちの店でしか味わえないプロダクトを集めています」

ゆったり気分を演出する、ピュアな味わいのコーヒー。

左から:日本風のデコレーションはジェフ・リンクさんのアレンジ。/「ゴー・スロー」を絵に描いたような風貌のジェフさん。ランチでおいしいとんかつサンドをサーブすることが当面の目標とか。

 BONANZAは、昔ながらの手法と、新しい技術をバランス良くミックスした焙煎で定評がある。ジェフさんがこの工房を選んだ理由は、「フレーバーを最大限に引き出し、クリーンでピュアな味わいを生み出しているから」。ブレンドコーヒーには、ペルーとブラジルの豆のブレンドを使用。そしてエチオピアやケニアなどのアフリカの豆は、フィルターコーヒー用と、数種類の豆を使い分けている。
 器やサーブの仕方にも工夫を凝らすジェフさん。その繊細な感性は、早くも多くのリピーターを魅了している。

TOKI
トキ

多くのクリエーターが仕事場を構えるエリアに1年前に登場した人気店。ショッピングストリートの裏という立地から、客層も広い。おいしいコーヒーと、90平方メートルの開放的な空間が魅力。
■ http://www.tokiho.amsterdam/

1ユーロ=約117円(2016年11月現在)

取材・文・写真 ユイキヨミ
更新日:2016/12/15



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