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コーヒー海外事情

芸術と人生を語り合う社交の場、バルセロナのカフェへ。

芸術と人生を語り合う社交の場、バルセロナのカフェへ。

名だたる文化人たちが集い、オペラ帰りの貴族が立ち寄り、コーヒーを片手に芸術談義を交わす場――。バルセロナのカフェは、古くから人々の社交場として独自の発展を遂げてきた。美味しいコーヒーと心地よい空間で定評のある、バルセロナのカフェ4軒とスペインのコーヒー事情を紹介しよう。

Cafe El Magnifico
カフェ・エル・マグ二フィコ

フル稼働するコーヒー焙煎機の音が店内に心地よく響く。

 時は19世紀末。美しく歪曲した鉄とガラスの扉が開き、無名の若き画家パブロ・ピカソがカフェに入ってくる。彼がコーヒーを飲みながらデッサンをしていると、建築家アントニ・ガウディが現れる。ガウディがコーヒーを頼むとまた扉が開き、今度はピアニスト、イサーク・アルベニスが入ってくる。そして彼らはコーヒー片手に芸術談義を繰り広げるーー。そんな光景がバルセロナのカフェ「アルツ・クワトラ・ガッツ(四匹の猫)」では日常だった。この伝説のカフェは1903年に看板を下ろすも、バルセロナのカフェは、芸術、政治、そして人生までを語り合う社交の場所であり続けてきた。

三代続く職人の技が光る、珠玉のエスプレッソ。

 

左:世界各国から仕入れたコーヒー豆各種がずらりとストックされている。右:エスプレッソは1.4ユーロ。良心的な価格も嬉しい。

 

コーヒーは、注文後にバリスタが目の前で豆を挽いていれてくれる。

 その社交場をいまも支えているのが、1919年からバルセロナでコーヒーを焙煎し続けてきた焙煎職人一族サンツ家だ。三代目サルバドール・サンツ氏は、1980年代に「カフェ・エル・マグニフィコ」を創設し、スペインで焙煎職人としてジャマイカ・ブルーマウンテン、プエルトリコ・ヤウコセレクト、ハワイアンコナといった高級コーヒー豆を販売する第一人者となった。

 現在では、バルセロナ中のカフェに煎りたての美味しいコーヒー豆を提供し、彼の名はカフェオーナーばかりか、本来は焙煎職人の名など知るよしもない一般市民にも知れ渡っている。そして、その職人が昨年、テーブルひとつのカフェをオープンするや話題の店に。熱心なコーヒーファンは自宅近くのカフェを素通りし「カフェ・エル・マグニフィコ」まで一杯のコーヒーをわざわざ飲みにやってくるようになった。

 彼らの目当ては、焙煎機で焙煎したばかりのコーヒー豆でいれるエスプレッソ。一杯一杯、目の前で腕利きのバリスタが煎りたての豆を挽いていれてくれるエスプレッソは格別の味だ。客の多くは少々緊張した面持ちでコーヒーカップに静かに口をつける。そして次の瞬間、彼らの顔は和らぎ、友人と、バリスタと、見知らぬ他の客との会話が始まるのだ。

 たとえたったひとつのテーブルしかなくとも、美味しいコーヒーを出すカフェでは会話が生まれ、コミュニケーションが生まれる。それは、かつてピカソが、そしてガウディが、コーヒーを片手に芸術そして人生を語り合った時代となにも変わらないバルセロナのカフェの光景なのかもしれない。

Cafe El Magnifico
カフェ・エル・マグ二フィコ

バルセロナ屈指のコーヒー豆焙煎屋に併設されたカフェ。店内には、テーブルがひとつだけ。ほとんどの人は立ち飲みでエスプレッソをひっかけていくスタイルだ。焙煎職人がていねいにいれる極上の一杯が人気だ。
■ www.cafeselmagnifico.com

Cafè de l’Opera
カフェ・ダ・ロペラ

内装はモダニズム建築。壁には、創業当時のオペラで使われたオリジナルの鏡が掛けられている。

 バルセロナの社交場であるカフェ。その中心的存在に居続けるのが、バルセロナのオペラハウス「リセウ劇場」の向かいに店を構える創業1929年の「カフェ・ダ・ロペラ」だ。

 開店当時、オペラを鑑賞できたのは限られた貴族やブルジョワだけ。そんな特権階級である彼らの御用達カフェとして人気を集めたのがこの「カフェ・ダ・ロペラ」だった。「当時は、ウェイターがテーブルの横で鶏の骨を取り、貴族のお皿に食べやすい肉だけを取り分けていたそうです。そんなサービスがカフェでも当たり前な時代だったと祖父から聞いています」と「カフェ・ダ・ロペラ」三代目のアンドレウ・ロス氏は説明してくれた。

貴族から観光客までを魅了する昔ながらの味。

チョコレートと練乳のカフェ(2.4ユーロ)。

美しい光が差し込む店内でまったりとコーヒーを楽しむ。

創業以来変わらぬユニフォーム姿で働くウェイターに歴史を感じる。

 フランコ独裁政権が終わり、民主主義の風が吹き出した70年代から80年代にかけては、かつての「アルツ・クワトラ・ガッツ」がそうであったように、多くの政治家がこのカフェに集まり、コーヒーカップを片手に、政治を語り合った。「オペラを楽しむ文化人、著名人、インテリ達で連日溢れていました」とロス氏は言う。

 この成功はもちろんリセウ劇場のおかげだけではなく、カフェのコーヒーに対する熱意によるところも大きい。創業当時スペインやポルトガルで広まっていた、焙煎中に砂糖を添加してコーヒー豆の酸味と苦みを少なくした「トレファクト」コーヒーを邪道とし、無添加の「ナトゥラル」コーヒーにこだわった。コーヒー本来の酸味と苦みを生かし、最高のバランスでブレンドしたコーヒーを提供してきたのだ。

 いまでは様々な階級の人達がオペラを観ることができるようになった。そしてバルセロナの目抜き通りであるランブラス通りに位置するこのカフェには、多くの観光客もやってくるようになった。客層が広がったことに比例してメニューもどんどん増え、いまや14種類のコーヒーカクテル、50種類のコーヒーミックスドリンクが揃う。

 しかし、無添加コーヒー豆でいれるエスプレッソの味は頑なに守り続ける。創業当時そのままの面影を残すカフェで、昔ながらのエスプレッソを味わっていると、いまにもウェイターが貴族たちの皿に鶏肉を取り分けるナイフとフォークの音が聞こえてきそうに感じられる。コーヒーの味と香りが、20年代の空気を運んできてくれるのだ。

Cafè de l’Opera
カフェ・ダ・ロペラ

人の往来が激しいランブラス通りに面する。バルセロナのオペラハウス、リセウ劇場向かいに店を構える創業1929年の老舗。
■ www.cafeoperabcn.com

Federal Cafe
フェデラル・カフェ

カウンターを設置せず「見せるキッチン」の内装がスペインでは目新しく、斬新な空間を生み出している。

 老舗が幅をきかせてきたバルセロナのカフェだが、最近では新しい店も台頭し始めている。その火付け役ともなったのが「フェデラル・カフェ」だ。2009年3月にオープンしたこのカフェは、従来のカフェとはどこか違うが、それもそのはず、ここは在バルセロナ10年以上のオーストラリア人二人が手がけたカフェなのだ。

 カフェは2階建て。1階には大きなガラス窓から地中海の太陽がいっぱいに入り、スタイリッシュなカフェ空間をさらに爽やかなものにしている。2階は一変して落ち着いた雰囲気の中、優しい光が差し込む。そして、屋上にもテーブル席を配置。路上テラスが主流だったバルセロナ市民を驚かせた。

オーストラリア風カフェに、バルセロナっ子も夢中!

吹き抜けの2階には、コーヒーのよい香りがのぼってくる。

心地よい日だまりの中、窓際で飲むコーヒーも美味だ。

ついつい、コーヒーと一緒に頼みたくなるデザートが並ぶ。

左:男性にもフラットホワイトは大人気だ。右:ステーキ(14.08ユーロ)とフラットホワイト(1.80ユーロ)のランチ。

 そんなモダンなカフェで美味しいコーヒーが飲めると口コミで広まり、いまではお洒落な若者達で連日賑わうようになった。

 その人気はスタイリッシュな内装によるものだけではなく、コーヒー好きの客も納得させる実力派のコーヒーがあってこその確かなものだ。コーヒーは選び抜いたこだわりの豆を、独自のブレンドにしているという。

 またさすがオーストラリア人経営の新鋭カフェ、メニューに「フラットホワイト」を導入したのも大きな話題に。オーストラリア、ニュージーランドで生まれたアレンジコーヒー、フラットホワイトは、エスプレッソにきめ細やかに泡立てたスチームミルクを混ぜ込んだもの。泡立てたミルクを上にのせるカプチーノに比べてコーヒー本来の苦みが味わえると、ヨーロッパでも人気急上昇中だ。本来はカプチーノ好きなバルセロナの客もこのフラットホワイトにはすぐに夢中になった。

 さらにこだわりはコーヒーだけでなく、食事のクオリティも人気の秘密だ。コーヒー同様、食材に気を使い、大手スーパーマーケットなどではなく、新鮮な野菜は隣の青果店から、肉や魚も近くの市場から仕入れている。

 最近は、伝統的に昼食時間が14時~16時だったスペインにおいて、思い切って「ブランチ」をスタート。日曜日に正午から食べられるコーヒーつきのブランチは、若者の心を見事にとらえた。外国人だからこそできる斬新なアイデアが、ここでコーヒーを飲んでみたい! という気分にさせてくれるのだろう。

Federal Cafe
フェデラル・カフェ

スペインには珍しい大きなシェアテーブル。ここに座れば、他人と自然に会話が生まれるから不思議だ。スタイリッシュな内装に美味しいコーヒーと料理で人気急上昇。オーストラリア発のモダンカフェが新風を巻き起こす。
■ www.federalcafe.es

Meson del Café
メゾン・デ・カフェ

左:壁には歴代オーナーの写真が掛かっている。右:エスプレッソ(1.3ユーロ)は人気メニュー。バルセロナ風ガラスの器でひっきりなしに提供。

店内はいつも幅広い客層で賑わう。

車の整備士だった初代オーナーが作製したコーヒーマシンは、店内に大切に飾られている。

 モダンなカフェにバルセロナのお洒落な若者が流れていく中、四六時中、多種多様なお客で賑わっている大衆カフェがある。「バルセロナで最高のコーヒー」を出すといわれる創業1909年の「メゾン・デ・カフェ」だ。

整備士の情熱が生んだ、街で最高のコーヒー。

 コーヒーの味に魅せられた、ひとりの車の整備士アドゥアル・ロマゴサが試行錯誤してコーヒーマシンを自ら作り上げたことから、このカフェの歴史は始まる。当時カフェが珍しかったバルセロナでは爆発的な人気となり、1日に2200杯のコーヒーを売る日もあった。

 現在ここで出される「バルセロナで最高のコーヒー」は、1953年からここで働き始め、現在オーナーであるアントニオ・ペリグロス氏独自のブレンドだ。コスタリカ、コロンビア、ハイチ産コーヒーをブレンドし、酸味をおさえた深い味わいのコーヒーだ。

 いまは現役を引退し、カフェ内に展示されているロマゴサ氏手作りのコーヒーマシンを眺めながら頂く一杯のコーヒーは文句なしの絶品なのである。

Meson del Café
メゾン・デ・カフェ

アンダルシアの白い壁の村を思わせる、バルセロナらしからぬ外観に誘われる。バルセロナで最高のコーヒーを出すといわれる、創業1909年の老舗中の老舗。朝から晩まで、変わることなくコーヒーファンが詰めかける。

1ユーロ=約129円(2013年4月現在)

文・写真 森本徹 
更新日:2013/06/25



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