ホセさんのキッチンは、今日も香ばしいコーヒーの香りでいっぱいです。
ふと、カウンターの上に目をとめたバリスタくんが言いました。「あれっ?この底に穴の空いた不思議なカップはなあに?」「それはねっ!」コーヒーカップーとサイフォン兄弟がいつものように張り切って答えようとしたそのときです。どこからともなく、甘くてなつかしい、それでいてコーヒーがもう一杯飲みたくなるような素敵な香りが流れてきました。「ほうっ!これはこれは。」「ああ珍しい、さとうさんがやってくるよ。」イスに深くこしかけて、世界のコーヒー豆のことを話し合っていたホセさんとミスターインスタントが、うれしそうに言いました。
とびらを開けて、さとうさんが入ってきました。まっ白で四角い顔、そしてとっても甘い香り。「ごきげんよう、諸君。」「こんにちは、さとうさん。」みんながあいさつを交わすそばで、バリスタくんだけはさっきの不思議なカップをにぎりしめたまま、もじもじと恥ずかしそう。そんなバリスタくんに気づいたさとうさんは、「おや、君がぼくにコーヒーを入れてくれるのだね?」気さくに声をかけました。
「は、はじめまして。ぼく、バリスタくん。コーヒーを入れてあげたいけど、このカップには穴が空いていて使えないんです。」これを聞いたみんなは大笑い。バリスタくんのほっぺは、みるみる真っ赤になりました。「バリスタくん、違うの。これはコーヒーを入れる器具の一つよ。」コーヒーマイスターがやさしく教えてくれました。「よし、それじゃ特別にぼくがコーヒーの入れ方を見せてあげよう。」さとうさんが腕まくりをして言いました。
「まず、カップとこの器具をお湯であたためておく。」「紙フィルターを、この器具にひいて、コーヒーの粉を入れる。」「お湯を注ぐ。」さとうさんは楽しそうに、テキパキとコーヒーを入れていきます。ポトポトとコーヒーのしずくがカップに入るたび、素晴らしい香りが立ち始めました。「これはね、ペーパー・ドリップ式っていうんだ。」コーヒーカップーが得意そうに言いました。
「ちょっと待って!」「ぼくたちのこと、忘れていない?」もっともっと得意そうなのは、サイフォン兄弟です。「ぼくたちは、空気圧を利用してコーヒーを入れることができるんだよ、えへん。」「サイフォン式っていうんだ、香り高いコーヒーが出来上がるプロセスも楽しめるよ。えへん。」これには、バリスタくんもびっくり。「うわあ、コーヒー豆にもいろいろあったけど、入れ方にもいろいろな方法があるんだね。」
「他にも、ネルという布を使うネル・ドリップ式は、コクのあるおいしいコーヒーが出来るんだ。蒸気の力で濃いコーヒーを入れるエスプレッソ式などもあるよ」ホセさんは棚から色んな道具を取り出してみせてくれました。
「豆の種類、挽き方、ローストの仕方、コーヒーの入れ方、いろいろ試して自分のお気に入りを見つけるといいよ。」さとうさんがやさしくバリスタくんの背中をたたきます。
「そして、時間がない時でもおいしく飲みたい時はインスタントコーヒーだよ」と、ミスターインスタント。
コーヒーの香りにつつまれたホセさんのキッチンは、いつまでもにぎやかです。
~次回はバリスタくんが、いよいよコーヒータウンに帰るよ!お楽しみね。